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「……竜神様、お返しいたします」
大きな口が刹琳を捕らえた。そして、宝玉を器用に咥えると、ごくりと飲み込んだ。
眩い光をまとい、竜神が迦楼羅の方へ飛んでいく。
「天翔様!」
ぎゅっと、刹琳は天翔の手を握った。天翔は刹琳を強く引き寄せる。二人が口づけを交わした瞬間、暖かい風が舞い上がった。
眩い黄金の光が辺りを包み込む。一閃の光明が立ち消えると、現れたのは黄竜だった。
黄竜が迦楼羅に向って飛んでいく。それに気づき、迦楼羅は那阿我から視線をそらした。
そのすきに、那阿我は迦楼羅の横腹に鋭い牙を突き刺した。
甲高い悲鳴が辺りを駆け巡る。だが、迦楼羅は頑健な足で那阿我を蹴り飛ばし、牙を振りほどく。
「竜神が歯もたたないなんて……」
「もともと、竜衆が島に渡ってくるまでは、この島は迦楼羅の支配下だったんだ。だとすると、那阿我は迦楼羅の力には敵わないということだ」
「それでは、竜神では迦楼羅を封印できない?」
「そうかもしれないな」
天翔が言うと刹琳は絶望感に襲われた。強く手を握られ、彼女は天翔を見る。
動揺する刹琳とは逆に、天翔の目は落ち着いていた。諦めとは違う、決意に満ちた表情に嫌な予感がよぎる。
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