6-2

7/9
前へ
/217ページ
次へ
「……竜神様、お返しいたします」  大きな口が刹琳を捕らえた。そして、宝玉を器用に咥えると、ごくりと飲み込んだ。  眩い光をまとい、竜神が迦楼羅の方へ飛んでいく。 「天翔様!」  ぎゅっと、刹琳は天翔の手を握った。天翔は刹琳を強く引き寄せる。二人が口づけを交わした瞬間、暖かい風が舞い上がった。  眩い黄金の光が辺りを包み込む。一閃の光明が立ち消えると、現れたのは黄竜だった。  黄竜が迦楼羅に向って飛んでいく。それに気づき、迦楼羅は那阿我から視線をそらした。  そのすきに、那阿我は迦楼羅の横腹に鋭い牙を突き刺した。  甲高い悲鳴が辺りを駆け巡る。だが、迦楼羅は頑健な足で那阿我を蹴り飛ばし、牙を振りほどく。 「竜神が歯もたたないなんて……」 「もともと、竜衆が島に渡ってくるまでは、この島は迦楼羅の支配下だったんだ。だとすると、那阿我は迦楼羅の力には敵わないということだ」 「それでは、竜神では迦楼羅を封印できない?」 「そうかもしれないな」  天翔が言うと刹琳は絶望感に襲われた。強く手を握られ、彼女は天翔を見る。  動揺する刹琳とは逆に、天翔の目は落ち着いていた。諦めとは違う、決意に満ちた表情に嫌な予感がよぎる。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

213人が本棚に入れています
本棚に追加