6-2

9/9
前へ
/217ページ
次へ
 天翔と那阿我が光に包まれていく。王都を包み込むほどに広がった光に目が眩んだ。  思わず閉じた目を刹琳が開いた時には、天翔の姿は見当たらなかった。  代わりに現れたのは、極彩に光る竜神だ。  竜神は一声啼いて迦楼羅に向かって突進した。迦楼羅の首元に噛みつくと、そのまま宮廷の裏手にある山へ迦楼羅と共に落ちていく。  那阿我と迦楼羅が山に追突し、地割れのような衝撃が黄寿中に走った。  山は砂煙に包まれ、煙が天に昇り、雲を作る。徐々に雲は大きくなり、しばらくすると雨が降り出した。  竜神の降らせた雨だと刹琳は気づく。その証拠に、山が那阿我と迦楼羅が衝突した場所からからふもとにかけて、深い緑に覆われて行った。  雨はすぐにやみ、雲の晴れた空から差し込んだ光明が山に差し込む。青々とした緑に包まれた山には、那阿我の姿も迦楼羅の姿も消え去っていたのだった。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

211人が本棚に入れています
本棚に追加