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終章
夏の迫る頃、宮廷は新しい皇帝の即位に沸いていた。玉座についたのは、先代皇帝の残した秘宝を見つけた賢君と噂される年若い皇帝だ。
長らく皇帝の不在だった宮廷を、この日も皇帝は慌ただしく歩いていた。官吏たちが、皇帝の歩みに合わせて叩頭していく。
その間を、堂々とした足取りで皇帝は歩いた。
「――下がれ」
皇帝は執務室に入ると、宦官たちを室から追い出した。
「……はあぁああ」
とたんに、がくりと肩から力を抜き、皇帝――伯儀は椅子にへたり込むように座った。
「随分、お疲れのようですね、伯儀様」
室に残っていた臣下――幽皓を、伯儀は横目に見る。
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