終章

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「当たり前だろう。兄上たちが不在の今、僕が動かなければ、何も始まらないんだ。まったく、自分勝手な兄たちを持つと大変だよ」  伯儀は額を抑え、ため息を吐く。  今回の即位は、誰もが予期していなかった。  秀清は父親に裏切られた事実を受け止められずに喪心し、今は母親の故郷で療養中だ。汪寧はどうやら敵対していた天翔がいなくなり、玉座に興味が無くなったらしい。毎日、ぼんやりと空を見上げては、ぶつぶつと何かを呟いている。  二人の兄が即位できる精神状態ではなくなり、その地位が回ってきたのが伯儀だった。  結局、最終的に兄である天翔の思惑通りとなってしまったわけだ。 「……もう、ひと月たつのか」  ぽつり、と伯儀は呟いた。思い出すのは、那阿我と迦楼羅と共に消えた兄の事だ。 「初めから、天翔様は自害するつもりだったみたいです。伯儀様を皇帝にするには、自分の存在は邪魔だと仰っていたことがありましたから」 「そうか……」  伯儀は瞑目した。気を落ち着かせるように、浅く呼吸を繰り返す。 「しかし、あれは自害ではない。そうだろう?」 「――はい」  幽皓は言葉に詰まりながらも答える。伯儀は幽皓の返事を聞き、ゆっくり目を開いた。 「兄上は刹琳殿を――この国を守った」 「そうです。天翔様はこの国を守った英雄です。俺たちを守って――」  幽皓はそこまで言うと、唇を噛みしめて黙り込んだ。耐えるように目を閉じた表情は、やるせない思いを噛みしめているようだった。
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