終-2

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 視界の先にあったのは油桐花の木だった。満開に咲いた白い花が、風に吹かれて花弁を散らす。 「こんな時期に、どうして油桐花が咲いているのでしょうね。――それにしても、油桐花を見ると、里が恋しくなりましたね、刹琳さま。やはり、あの男ことは忘れて一刻も早く里へ帰りましょう」  突然現れた油桐花の木々を見上げ、鳳李が言った。 しかし、刹琳の耳に鳳李の声は届いていない。彼が答える代わりに頭の中で響いたのは、伯儀の言葉だった。 (里の油桐花を見たいと、天翔様はおっしゃっていたのですよね?)  今、この場所に天翔がいないことが悔しくてたまらなかった。こんなにも美しい風景を、天翔と見られないことが悲しくてたまらない。 (この景色を見せることも、伝えることもできないなんて、わたくしには耐えられません)  花を見上げた刹琳は、目頭が熱くなるのを感じた。それ以上に、胸の奥が焼け焦げるほどに熱い。胸元を押さえるように手のひらを握りしめ、瞑目する。 「――天翔様、何処にいるのですか?」  心の声が口から零れ落ちた、その時だ。銅鑼の音のような咆哮がどこかから聞こえた。
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