終-2

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「どうして、こんなところにいたのですか?」 「分からない。那阿我に頼んで私の体を生贄に、迦楼羅を封じたのだが……。きっと、死ぬのが惜しくなったんだ。君と離れることは、やはりできなかった」  天翔は刹琳の事を確かめるように強く抱きしめた。苦しくなるほどの力に、刹琳は天翔が本当に帰ってきたのだと実感する。 「眠っている時に、夢を見た気がする。――陸族の里で刹琳と共に油桐花を見ている夢だ。だが、君は花を見上げながら、泣いているんだ。それを拭おうと思っても、拭えない。そんな夢だ。だから私は、君へ必死に泣くなと呼びかけているんだ。隣に居るのに振り向いてくれない君へ、必死に呼びかけているんだ」 「その声、ちゃんと聞こえました」 「え?」  驚いた顔をして、天翔は刹琳の体を放した。
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