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道なき道を黄竜が走る。
激しく揺れる黄竜の背に乗りながら、刹琳は天翔の背に掴まった。
木々の間を飛竜で駆け抜けながら、天翔は枝葉を剣で払い落としていく。飛竜軍たちは、天翔の後に続き飛竜を走らせている。
「……飛竜に乗ってるっていうのに、どうして地面を走らなきゃいけないんだ」
聞こえたのは、不服そうな龍乾の声だった。それをなだめるように凱清が言う。
「そういうな、龍乾。飛竜に慣れない刹琳姫に、また空の旅をさせるのは酷だろう」
「すみません、皆様。わたくしのせいで……」
刹琳は舌を噛みそうになりながらも謝罪した。
しかし、再び黄竜で空を行くのはどうしても耐え切れなかった。もしも、また気分が悪くなり、天翔らに迷惑をかけるくらいならと思ったのだが。飛竜で地面を走ることは、飛竜軍の者にとっては不服なことなのかもしれない。
刹琳が落胆していると、刹琳の背中にしがみ付いていた鳳李が言った。
「気にすることはありませぬ、刹琳さま。きっと飛竜たちも、たまには地上を走りたいに違いありません。こうして立派な足があるのですから、たまにはいいではないですか」
どこかずれたことを言う鳳李に、天翔が笑い声をあげる。
「いいことを言うな、少年。確かに、飛竜たちもたまには足腰を鍛えた方がいいだろう。それに、これは想定の範囲内だ。だからこそ、街で買い出しを済ませたんだ。地面を行くとなれば、今日中に都にはつかないからね」
そう言うと、天翔は森の深くまで黄竜を走らせて行った。
日も暮れ、橙色の光が木々の隙間から差し込んできた頃、黄竜が止まった。
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