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「貴様らぁ! 野外訓練だ! 速やかに寝床と、飯の準備を始めろ! 少しでも規律を乱す奴らは、飛竜軍から追い出すぞ!」
声に驚いた烏が木々から飛び立つ。
「て、天翔様?」
刹琳は豹変した天翔に、ぴしりと表情を固めた。唖然とする刹琳をよそに、天翔は飛竜軍の部下たちに指示を出していく。
「凱清、今日のねぐらの用意をしろ! 龍乾は近くの沢から水を汲んで来い!」
温厚な態度から一転、天翔は修羅の如き迫力で部下たちに指示を出していく。
神殿で蝶よ花よと育てられた刹琳は、目の前の現状を受け入れることが出来なかった。
ふるふると震える刹琳の肩を、廉が叩いた。
「刹琳姫、お気を確かに。これが、天翔様の大将軍としての顔ですが、怖がることはありませんよ。女子供には基本的に優しいので。……まあ、今の天翔様を見れば、人食い熊だろうと、悪鬼だろうと逃げ出すでしょうけれどね」
「無駄口を叩くな、廉! 油を売る暇があるなら、その油で火を起こしてみたらどうだ!」
びしっと、天翔は廉を指さした。廉は慣れた様子で天翔をあしらう。
「分かりました、私は火を起こせばいいんですね。そうだ、鳳李君。少し手伝ってくれますか?」
「なぜ、僕がお前たちに手を貸さなければならないんだ」
「君の大切なお姫様のお食事の用意をするのですよ。私達に任せてもいいのですか? もしかしたら、良からぬものを食事に混ぜるかもしれませんよ?」
「うっ……。し、仕方ないな。――刹琳様、鳳李はお食事の用意をしてまいります。くれぐれも、そちらの二重人格男にはお気を付けて」
鳳李は渋々、廉の後について行く。
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