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「て、天翔様!」 「心配するな、刹琳殿。この子たちは、私と遊びたいだけだ。ほうら、見てみろ。可愛い顔をしているだろう?」  頭から一筋の血を流しながらも、天翔は笑っていた。 「あの男、二重人格ではなく、三重人格だったのか……!」  血を流しながら嬉しそうに笑う天翔に、鳳李はドン引きした声で言った。 「天翔様の言う事も、あながち間違いではないのですよ。もしも、飛竜が本気で嫌がっているのなら、人間の頭蓋骨など、一瞬で砕いてしまいますから」  廉は天翔を擁護した。刹琳はなるほど、と納得する。  確かに、鋭い牙を持つ竜に噛まれても無事なのだ。飛竜も天翔と遊んでいるだけかもしれない。 「……それにしても、天翔様もあのように幼子のような顔をすることがあるのですね。いつも穏やかで冷静なお顔をされていますから、少し驚きました」 「あの方が気を許してらっしゃるのは、竜と弟君の伯義様だけですからね」  廉は視線を伯儀に移した。龍乾の手伝いで食事の用意をしていた伯義を、刹琳は見た。 (そういえば、街で天翔様を兄上と呼んでいましたね。天翔様の弟君ということは、皇子殿下ということですよね? それでは、伯儀様は天翔様が王位につく手助けをされているのでしょうか)  刹琳が考えていると、血だらけの天翔に気づいた伯義が、駆けつけてきた。 「兄上! またそのようなお戯れをして! 無駄に生傷を増やすのはおやめ下さいと、あれほど言っているでしょう!」
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