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「おお、伯儀。食事の用意はすんだのか? だったら、どうだ? お前もこの子たちと遊ぶか? そうだ、刹琳殿も一緒にどうだ?」  天翔は「さあ!」と、刹琳と伯義に両手を広げて見せる。 「遊んでいる暇などありませんよ。だいたい、僕だけならまだしも、刹琳殿を巻き込むなど、言語道断です。女人にこのような危ないことをさせるなど、男子たる者、見過ごすことが出来ません」 「お前は相も変わらず、頭が固いな。刹琳殿は竜衆の姫だぞ。ゆくゆくは、皇帝の妻になるかもしれん人だ。今のうちに親睦を深めてはどうだ?」 「なっ、何をおっしゃるのですか! お戯れもいい加減にしてください!」  天翔の言葉に、伯義は顔を真っ赤に染めた。 (わたくしが、皇帝の妻に?)  刹琳はその意味が分からず、首を傾げた。 「あの、それはどういう――」  と、尋ねようとした時、龍乾の声がした。 「天翔様、食事の準備が終わりました」 「おお、そうか」  天翔が返事をすると、寝床を作っていた凱清が洞穴から出てきた。 「竜の餌やりは俺がやっておきますんで」  凱清は竜の餌の入った桶を持ち上げた。 「仕方がないな。では、頼んだぞ、凱清。――刹琳殿も腹が空いただろう。さあ、食事にしよう」  まるで憑き物が落ちたように、天翔は緩んだ頬を引き締め、刹琳の手を取った。  火を熾した場所まで戻ると、龍乾が鍋に作った粥をかき混ぜていた。どうやら麦の混じった粥のようだ。
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