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「よせ、龍乾。……刹琳殿、こいつの言う事は気にせず、口にあわないなら捨ててしまってもいいですよ」
天翔が龍乾の手を掴み、刹琳に言った。
「そのようなことはできません。有難く、いただきます」
刹琳は椀に目を落とす。生唾を飲み、恐る恐る匙を粥に沈めた。粥を掬い、口に運ぶ。
「――おいしいです」
粥が喉を流れる感触に、刹琳の頬が自然と緩む。じんわりと胸が温かくなり、優しい甘さが気を張った心を解いていく。
粥を飲み込むと、もう一度、匙で粥を掬った。先ほどとは比べ物にならない恐怖を感じながらも、粥を食べる。
震える喉で飲み込むと、後は一度も匙を止めることなく粥を食べきった。
「よし!」
空の椀を見た龍乾が、刹琳の椀にもう一杯粥を注いだ。
刹琳は驚き、椀と龍乾を見比べる。そして、
「いただきます」
頭を軽く下げると、二杯めの粥に匙を沈めた。
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