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「鉢合わせた陸族と王族は互いに剣を抜いた。そして、随員たちが剣を交えている時、運悪く黄竜の卵が割れてしまった。卵から飛び出した黄竜は、二人の竜衆の子を見て、頭を悩ませた。どちらの子に入ればよいのか悩んだ黄竜は、王族の子と陸族の子、二つの頭がそれぞれ別の体に飛び込んだ。――おかげで、黄竜の体は二つに裂けてしまい、私と刹琳殿の体には半身に分かれた黄竜が封じられることとなった」  天翔が話し終えると、刹琳は胸に手を当てて言った。 「では、わたくしが精竜を召喚できなかったのは、竜の体の半分だけが封じられていたためということですか?」 「さよう。――すまんかったな。黙っていたせいで、お前にはいらぬ気苦労をさせてしまっただろう。竜宮参りは人生で一度しか行えぬ。偶然とはいえ、一国の皇子と竜を分け合っていると周囲に知られれば、お前が今以上に面倒な立場になってしまうと思ってな」  我羅は心痛な表情で、目を伏せた。 「謝らないでください、父上。父上がわたくしや里の事を思い、黙っていたことは分かりました。それよりも、わたくしは精竜を召喚できたことが嬉しゅうございます」   刹琳が微笑むと、我羅は涙を堪えるように眉間へしわを寄せた。 「それで、天翔様がこの里へいらした理由と精竜は、どのような関係があるのですか? 十数年たった今、突然里を訪れた理由を教えていただけますか? 精竜が必要な理由を教えてください」  その理由が、恐らく里が山賊に襲われたことに関係している。刹琳はそう思った。
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