3

2/3
210人が本棚に入れています
本棚に追加
/217ページ
「おや、刹琳殿は竜が苦手なのか」 「竜というよりも、その――高い所が苦手のようです」  今まで高い所に上ったことなど一度もなかったので、自分でも知らなかった。刹琳は口元を押さえ、俯いた。 「刹琳さま、大丈夫でございますか? おい、誰か水は持っていないのか!」  刹琳を気遣う声が、背後からした。  いそいそと鳳李が竜のしっぽから、刹琳のいる首元へ回ってきた。黄竜を囲むように飛ぶ飛竜軍へ呼びかける鳳李を、刹琳は咎める。 「おやめなさい、鳳李。わたくしなら、大丈夫ですから」 「ですが、刹琳さま。鳳李は貴女さまにもしものことがあれば、生きてはおられませぬ」  涙ぐむ鳳李に、刹琳は苦笑する。 「そうだな。少年の言う事も一理ある。刹琳殿にもしものことがあれば、私も生きてはいられない」  刹琳の腹に手を回し、天翔は刹琳を支える。 「私には貴女が必要だ。貴女を大切に思うのは当然のこと。それに、元々、都へ向かう前に一度、町へ立ち寄る予定だったからな。少し予定を早めるだけだから、貴女は気にする必要はない」  耳元で囁かれた刹琳は、蒼白な顔から一転、耳まで真っ赤に顔を染め上げた。  それを見て、飛竜軍たちの方から笑い声が聞こえた。 「どうやら、顔色は戻ったようだ」 「凱清、あまり刹琳姫をからかうようなことを言うな」
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!