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「そうだったのですね。まったく、気が付きませんでした」
というか、気が付いていてもそれを不審に思うこともなかっただろう。
「怪しい奴らだというだけではなく、私達がここで襲われることを天翔様は予感していたのでしょう。――すでに王位争いは始まっているのですからね」
「では、あの山賊たちは天翔様と敵対する皇子が放った刺客ということですか?」
「恐らくは、そうでしょうね」
「しかし、王位は飛行船を見つけた者が継ぐのではないのですか?」
「表向きはそうですね。ですが、もしも不慮の事故で、遠出をしている皇帝候補が亡くなったとしたら、他の候補者にとって、それは幸運な出来事でしょうね」
どうやら、山賊たちは天翔を暗殺するために放たれた刺客だったようだ。天翔が暗殺され、他の皇子が皇帝になったとしても、誰も皇帝を疑うことはできない。
(里を襲ったのも、皇子の一人ということでしょうか? それならば、すでに天翔様とわたくしが黄竜を召喚することができると、皇子たちに気づかれているのでしょうか?)
既に、王位争いに巻き込まれていると自覚した。
静まり返った森に不安がこみあげて来た時、楽安の方から声がした。
「刹琳殿、廉! 無事か?」
上空から聞こえた声に、刹琳は顔をあげる。見ると、飛竜に乗った天翔と飛竜軍たちが町の方から飛んでくる。
天翔は刹琳と廉を見つけると、飛竜を着陸させた。
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