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 庭の中心に置かれた椅子に、刹琳は縛り付けられていた。 「これは、一体どういう事ですか? 貴方は里を救ってくれたのではないのですか?」 「手荒な真似をしてすまない。この度は、竜衆である陸一族の姫様にお話があり、馳せ参じた次第だ」  丁寧な口調とは裏腹に、青年は頭を下げることなく話す。 「先ほど召喚した黄竜のことは覚えているかい?」 「はい――。あの精竜は、本当にわたくしが召喚したのですか?」 「正確には、私と貴女の二人で召喚したんだよ」  青年は言うが刹琳は信じられなかった。 「しかし、わたくしは――」  刹琳は口ごもる。  青年が何者か分からない以上、これ以上話すわけにはいかない。不自然に言葉を詰まらせたまま、どうしようかと刹琳が思案していると、謎の青年の背後から聞きなれた声がした。 「貴方様は黄寿国の皇子殿下でございますね」  声を辿り視線を向けると、武官たちが何かを取り囲んでいることに気づいた。武官たちは背後に隠れていた人物の肩を押し、前へ突き出した。  その人物は、刹琳の父親であり、この里の長である我羅(がら)だった。我羅は刹琳と同じように縄で上体を縛られている。  青年は「ほぅ」と、感嘆すると言った。 「さすがは陸族の長。気づいておられたか。……いかにも、私は黄寿国が第三皇子――天翔(てんしょう)。以後、お見知りおきを」  第三皇子と名乗る青年――天翔は、我羅に頭を下げた。
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