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「あ、実家は親がいるんだろ? 会っても大丈夫?」
「平気だよ。でもカミングアウトしてるのは達樹にだけだから、そのつもりで来てくれる?」
「もちろん。同僚ってことでいいんだよな?」
「うん。ごめんね、本当のこと言ったら、両親はびっくりするだろうから」
「当たり前だろ。謝らなくていいし、うかつに言えることじゃないし、そんなの急がなくていいよ」
急がなくていいよってことは、いつかカミングアウトする気があるってこと? 予告というか仮というか、もうプロポーズの言葉はもらっているし、そういうことだよな。
「うわー、祐樹の両親か。すげー楽しみ」
孝弘は特に気負ったふうもなく、無邪気に喜んでいる。
もしためらうそぶりを見せたら、いつも通り孝弘には都内のウィークリーマンションか彼の実家で過ごしてもらって、東京近郊デートをしようと思っていたのだが、孝弘は本当に楽しげに屈託なく笑った。
「あ、やべ。もう出なきゃ」
いつの間にか家を出る時間になっていた。
「これ、ありがと。ホントに嬉しかった」
慌ただしく触れるだけのキスをして、孝弘が先に立ち上がる。
一緒には出勤しない。孝弘が出てから洗い物をして、だいたい十分くらいあとに家を出る。
そこまで心配する必要はないのかもしれないが、二人で話し合ってそうしていた。
どこか弾むような背中を見送って、祐樹はほっと肩から力を抜いた。達樹に会うことも両親に会うことも、孝弘はまったく躊躇しなかった。
すげー楽しみ。そう言ってくれた。
それがとても嬉しい。
コーヒーを飲み終えて、祐樹は洗い物をしようと立ち上がる。
完
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