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「何作ってるの?」
ボールの中には薄茶色の生地が入っている。
「そば粉をもらったからガレットを作ろうと思って」
「ガレット?」
「そば粉のクレープ。甘いお菓子じゃなくて食事用のクレープだよ。もう焼いていい?」
「うん、食べたい」
孝弘は大きなフライパンにオリーブオイルを温めて生地を入れ、その上にベーコンや卵やチーズを次々に乗せて塩をふり、さらに黒コショウを多めに振った。
キッチンにおいしそうな匂いが漂う。
「こうして見ると、煎餅(ジェンビン)みたいだな」
「確かに」
煎餅は屋台で売っているクレープだ。
クレープ生地に卵を落として辛みそを塗って揚げせんべいと刻みネギを挟んだもので、路上で気軽に食べる朝食やおやつだ。
「まあでも似たようなもんか」
四角くなるように端を四カ所折り畳んで、目玉焼きが見える状態で皿に移した。こんな写真をどこかの雑誌で見たような気がする。
「なんか、おしゃれな感じ」
「うん。見た目で勝ってるかもな」
ゆうべの残りの野菜スープを添えて朝食にした。
「あ、おいしい。そば粉の香りがいいね」
「ああ、小麦のもっちり感とまたちがうな」
さっくりしたクレープ生地に、ベーコンと半熟卵とチーズが絡んで絶妙なおいしさだった。
「ベーコン卵チーズって外さないよね」
「うん。絶対うまいやつな」
衛星放送を見ながらガレットを食べ、温かいカフェオレを飲んでいると、ここが大連だとは思えない。
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