第2章

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「お疲れさま」  温かい玉米茶(ユィミィチャ)(コーン茶)を出されて、マグカップを受け取った。香ばしくてほんのり甘いお茶だ。 「うん、喋りつかれた」   北京語で長時間話すと普段使わない舌使いや発音をするせいか、口の中が疲れたなあと感じるのだ。じいんと舌が疲労している感じだ。 「祐樹の北京語、だいぶ上手になったよな」 「そう? 孝弘の指導のおかげかな?」 「えー? そんなに教えてないだろ」 「うん。でもやっぱ聞く機会が増えたよ」  確かにきちんと教えてもらっていないが、一緒に過ごすうちに自然と耳に入ってくることは多い。祐樹が広州駐在だったころは部屋のテレビはたいていBBCか日本の衛星放送だったし、中国ドラマもあまり見なかった。  でも大連に来てからはテレビはCCTV、ドラマや映画も北京語で見る孝弘につられて見るので、いつの間にか俳優の名前や歌手も覚えて、祐樹の北京語能力はアップしている。 「孝弘に教えてもらうまで、裁判をテレビ放送してるとかも知らなかったし」 「ああ。あれ、けっこうびっくりするよな」  裁判所での審理をテレビで生放送していると聞いた時は本当に驚いた。どんなものかと何度か見たがそれほど面白くはなかった。ただ原告も被告も堂々と自分の主張をするところは中国らしいというべきか。 「犯罪抑止力のためって聞くけど、効果あるのかな」 「どうだろう。その辺は謎だよな」  ただ刑罰が日本より厳しいのは確かで、驚くような判決が出ることがある。
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