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「東北人は背が高くてスマートだって言いますからね」
「ああそうか。南方のほうが背が低いんだっけ?」
「そうです。もっとぽっちゃりした感じが好みでした?」
「いやいや、僕の好みはどうでもいいよ」
青木が少し慌てたように手を振った。
「日本人受けする店がいいかと思っただけ」
「こっちも日本企業が多く使ってて、わりと評判いいですよ」
「そうか。じゃあ、ここにするか」
会社の接待でその手の店に行くのなんか仕事の一環で、いちいち嫉妬するほどのことではない。祐樹だって取引先に夜総会やナイトクラブに連れて行かれて女の子にちやほやされたことくらいある。
ゲイの祐樹にとって別に楽しくはなかったが、女の子たちはきれいで優しかったし、場を白けさせないように楽しそうを装うくらいはもちろんできる。
一緒に行った上司や同僚は本当にでれでれと楽しそうに飲んでいたが。
…孝弘はどうなのかな。日常では見られないほど露出の高いきれいな女の子たちが横に座ってくれるのだ。酒を注いでくれて話を聞いて盛り上げてくれて…。
普通の男ならそりゃやっぱ嬉しいよな?
元々孝弘はストレートだ。
接待なのだから孝弘が楽しみに行くわけではない。でも何となくムカつく。こんなことくらいでそんなふうに思う自分に驚いた。
これも仕事だ。自分だってそういう場面では酔ったふりして取引先のご機嫌を取ったりする。孝弘もそれと同じだ。そう言い聞かせても、嫌なものは嫌だ。
「もしもっと別の店って言われたら、安全に遊べる店を教えておきましょうか?」
「ああ、そうしてくれ」
そこまで付添うつもりはないらしい。一瞬ほっとして、ていうか安全に遊べる店? それは誰情報なんだろう。ひょっとして自分でも調べたりした? いやいやまさか。
くだらない考えを止めてくれたのは取引先からの電話だった。バカなことを考えるのはよそうと思いながら受話器を取った。
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