第3章

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「これっていつ頃まで食べられると思う?」 「そろそろ捨てたほうがいいんじゃないか?」 「賞味期限はけっこうあるみたいだけど」 「どんな保存料入ってるかわからないからお勧めできない」 「そっか。もったいない気はするけどね」 「でも無理だろ、これ全部食べるとか」 「そうだよね。他に料理するとかおすそ分けするってわけにもいかないしね…」 「毎年のことだけど、ホント無駄なんだよな」  キッチンの隅に積まれた赤や金の箱を見て、二人でため息をつく。きれいな化粧箱の中身はすべて月餅だ。  中秋節の月餅は普通の小豆餡だけではなく、蓮の実入りとかアヒルの卵黄入りとか工夫を凝らしたものがたくさん出る。とはいうものの、基本的な味はほとんど同じだ。そもそも餡子がそれほど好きじゃない。  二人で切って分けても一切れ食べたらもう十分、丸一つはなかなか食べられない。というわけで中秋節から3週間ほど経った今も箱に入ったまま、ほとんど手つかずで残っている。  まだ50個以上はあるだろう。  ほぼ同じものが孝弘の部屋にもあるはずだ。 「ニュースでも言ってたよね。過剰に贈りあうのはやめましょうって」 「そうは言っても伝統的な習慣だからな。確かに年々、派手になってる気もするけど」
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