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佐々木
チャイナドレスを着た女の太股に、興奮してふるえる指先が触れる。初めて女の身体に触れる少年のように、たちまち節度を失ったその5本の指は太股のうちそとあたりをまさぐり始め、ついでやみくもにドレスをたくしあげ始めた。素っ頓狂な声を上げて女が俺の手を制し、その身を俺から遠ざける。「まあまあ、落ち着いて」連れの佐々木が笑いながらしかしなかば脅すように俺を諫めてみせる。どうしようもない童貞野郎めとその顔が嘲笑していたが同時におもしろがってもいたようだ。気温は夜に入っても悠に25度を超えていてここバンコクの夜は蒸し暑い。同様に俺の情欲もヒートアップしていた…。
女遊びには馴れっこの佐々木とはインドのニューデリーで知り合った。年は俺より5才ほど上の30少し前位だったろうか。みずから暴走族あがりを名乗り、日本での武勇伝を、並走してからかう他の暴走族と思しき男のバイクを蹴倒してみせたことや、また自分が空手使いであることなどを演舞をまじえながらその折り俺に披露してみせた。デリーでもそうだったが偶然再会したここバンコクでも人を誘うのが実にうまい男だった。無論女遊びにである。背が高く、いかにもバネがありそうで、ケンカは人後に落ちそうもない彼が女遊びに連れをつくるのは、おそらくそこが日本とは勝手の違う外国だったからだろう。武闘派でありながら遊ぶにしてもこの慎重さなら、もし彼が筋者であれば、その世界においてそれ相当の出世をするのに違いない。彼につれられてニューデリーで初めて女を買いに行ったとき、24才にして生まれて初めて女を知った俺を、男のとびっきりの珍種を見るようにおもしろがっていた。童貞とは云わなかったが彼にはすぐにそれとわかったようだ。遊びのプロともなると俺のような珍種の反応を見るのがおもしろいのだろうか。ここでも彼は(すでに)童貞亜種の俺に花を持たせて、我々に提供された2人の女を前にして「好きな方を選んでいいよ」と鷹揚にゆずってみせた。色白の中国系の女と色の浅黒いマレー系の女、俺は躊躇なく緑色のチャイナ服を着た中国系を選んだ。
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