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「ねー、今日ポッキーの日だよ!」
休み時間。鈴帆がポッキーの包装をビリッと破った瞬間、皆が彼女の席の周りにわぁっと集まった。
お菓子が飛び交うクラスっていいよね。
「はい、あげる」
「ありがと!」
私も一本貰った。
皆に配っているからあっという間に一箱が空になる。
すると、今度は桜が苺味のポッキーを取り出した。
「まだ貰ってない人ー?」
彼女がお菓子を持ってくるなんて珍しい。さっき貰えてなかった男子を中心に配っていて、春樹も一本受け取っている。
あれ、苺味好きだったっけ……。
何だかモヤモヤしていたら、何故か彼がこっちに視線を向ける。
多分、一瞬だけ目が合った。
いつもはこっちなんて全く見ないのに、なんで?
考えていた所に、軽く肩を叩かれて振り向くと、そこには本人が。
え、なんでこっちに?
動揺を悟られないように首を傾げると、少しだけ短くなったポッキーを差し出されて、勢いで取り敢えず受け取ってしまう。
「俺、やっぱ苺味は苦手だからあげる」
あの、これって……?
「じゃあ私の、もう半分食べちゃったけどあげるっ。普通のチョコなら好きでしょ?」
咄嗟に口から出た言葉。
でも、待って。よく考えてみたら私の方がやばいこと言ってる気が。
「んー……。じゃ、いただきまーす」
ちょっと迷ったみたいだけど、提案を取り消す間もなく私の手からポッキーが抜き取られた。
ごく普通にチョコのポッキーが彼の口の中に消えていく。
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