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光のそれは、衣替えした半袖カッターシャツから丸見えだった。
学校で赤い痣を堂々見せびらかしながら歩く光をみて、通りすがりの何人かはぎょっと振り返り二度見する。
(は、恥ずかしすぎる……)
と思いつつも、どうにかいたずらがバレないよう会話を取り繕うのに必死な勝行は、「ダニとかほんと困ったな。布団新しいのに買い替えてもいいよ」などとわざとらしく提案しながら隣を歩いた。
「勿体ねえ、いらねーよ。どうせクリーニング終わったら、布団フカフカになってかえってくんだろ?」
洗濯後をちょっと楽しみにしているのか、光の機嫌は悪くない。
「特急便でも数日かかるっぽいんだけど……」
「お前のベッドで一緒に寝るから平気だし」
声のトーンを下げずに堂々と答える光のセリフだけをきいて、また何人かが振り返った。
火のない所に煙は立たぬというけれど、あらぬ誤解が校内にバラまかれそうである。
勝行は苦笑しながら、わざと大きめの声で答えておいた。
「うんそうだね、しばらく不便だけど、ご自由にどうぞ。おれはリビングで寝るよ」
「え、そうなのか? 別に俺は一緒に添い寝でも――ンガァッ」
「あ、ごめんね。蚊が飛んでたから」
爽やかな笑顔のまま、勝行の本気ビンタが間髪入れず後頭部にぶっ飛んできた。まともに食らった光は、うっすら涙目になりながら頭をさすり、
「……ホントかよ」
と唇を尖らせた。
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