第7話 恋の悩みもラジオにのせて

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第7話 恋の悩みもラジオにのせて

** 『それでは本番十秒前。九、八、……』 「……な、なあ勝行……尻がムズムズする……」 「は? なんで今言うの、今から本番なんだけど」 「もう……無理……我慢できない……これ、ちょーだい……」 「はうっ、や、やめ、そんなとこ触んな……っ、あん……っ、ちょ、だめだって、ひか」 「だっ……めって言うけど、お前が……俺を……犯してる、ん……っ」 「ち、違う違う違う……っ身体が勝手に!」 ジャジャジャジャン、ジャーン♪ 『らじこむういんぐす、スタート!』 「うわあああ!」 うなされるように飛び起きた相羽勝行は、慌ててスマホを掴みとり、今日という日時を確認して安堵の息をついた。それから布団越しでもわかる、立派に育った朝の生理現象に気づき、盛大なため息をついた。 「うそだろ……またかよ俺……サイッテー」 夢見が悪すぎた。そうだ、夢のせいだ。男の生理現象だ。 心頭滅却すれば火もまた涼し。念仏のように数学の公式を唱えながらそれを強引に抑え込み、勝行は早朝からシャワー室に駆け込んだ。その頃悪夢の中で悩ましい顔を見せていた同居人は、勝行のすぐ隣ですやすや気持ちよさげに眠っていた。
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