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今日はライブハウスでも学校でも、キスしようとするたびにバコン、と殴られたせいでストレスが溜まっている。外では軽く頬キスしただけですぐ怒るくせに、家では腰が抜けそうなぐらい、甘ったるくて気持ちいいキスをねちっこく仕掛けてくる男だ。そのギャップがよくわからない。
光はキスが大好きである。
嫌いな人間とやるのは言語道断だが、家族や友人とは当たり前のようにしてきたし、もう今はいない両親が、且つてそうやって愛情表現の仕方を教えてくれた。だから彼にとってのキスとは、「家族同士のスキンシップ」であると認識している。
ここ、東京で彼と共に暮らすようになった頃、最初は「男同士でキスだなんて!」と嫌がっていた勝行だが、今では「しょうがないなあ、なら毎日してもいいよ」と許してくれている。
ただし、外はダメだから家の中だけで、という条件付きだったが……。
同居人で、親友で、義理の兄でもある勝行から、「愛されている」感覚に容易く浸れるあの時間は、孤独が苦手な光にとって大切で大好きなひと時でもある。
(あの勝行のおやすみキス、早く欲しいな……気持ちよくてすぐ眠くなるやつ……)
そう思うだけで、光の股間が何やらムズムズする。
気づけばもう意識がそっちのけになっていて、画面にはゲームオーバーの文字が出ていた。保存せずに電源をぶち切ると、ゲーム機を放り出して光は洗面所に向かう。
バン!
「なあ、まだ? 眠いからキスし」
「わぁあーっ!?」
開扉した途端、未開封の石鹸箱が飛んできて、光の額へと華麗にクリティカルヒットした。
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