第1話 キス魔はどっち!?

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今日はライブハウスでも学校でも、キスしようとするたびにバコン、と殴られたせいでストレスが溜まっている。外では軽く頬キスしただけですぐ怒るくせに、家では腰が抜けそうなぐらい、甘ったるくて気持ちいいキスをねちっこく仕掛けてくる男だ。そのギャップがよくわからない。 光はキスが大好きである。 嫌いな人間とやるのは言語道断だが、家族や友人とは当たり前のようにしてきたし、もう今はいない両親が、且つてそうやって愛情表現の仕方を教えてくれた。だから彼にとってのキスとは、「家族同士のスキンシップ」であると認識している。 ここ、東京で彼と共に暮らすようになった頃、最初は「男同士でキスだなんて!」と嫌がっていた勝行だが、今では「しょうがないなあ、なら毎日してもいいよ」と許してくれている。 ただし、外はダメだから家の中だけで、という条件付きだったが……。 同居人で、親友で、義理の兄でもある勝行から、「愛されている」感覚に容易く浸れるあの時間は、孤独が苦手な光にとって大切で大好きなひと時でもある。 (あの勝行のおやすみキス、早く欲しいな……気持ちよくてすぐ眠くなるやつ……) そう思うだけで、光の股間が何やらムズムズする。 気づけばもう意識がそっちのけになっていて、画面にはゲームオーバーの文字が出ていた。保存せずに電源をぶち切ると、ゲーム機を放り出して光は洗面所に向かう。 バン! 「なあ、まだ? 眠いからキスし」 「わぁあーっ!?」 開扉した途端、未開封の石鹸箱が飛んできて、光の額へと華麗にクリティカルヒットした。
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