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音楽が好きなんだろうな、という気持ちはワンフレーズでビリビリと伝わってくる。それはバンドマン同士だからこそ共感しあえる暗黙の空気だ。
「光はとにかく自分らの奏でる音にトリップしちまうけど、めちゃくちゃ楽しそうで可愛いだろ。あー、光ってのはあのシンセの金髪な。あいつが困った野郎で、すぐ遊びだすんだ」
「遊びだす……?」
「ああ、ほら」
きゃあああっ、とひと際高い歓声が跳ね上がると同時に、ソロかと言わんばかりにピアノだらけの高速ポップサウンドが流れ始める。ギターがまったく追いつかないし、リズム隊はさっきから同じフレーズを延々繰り出すばかりだ。
「は? なんだ、このめちゃくちゃな」
言い終わるや否や、ピアノの独奏ならぬ独走をまるっと引き継ぐかのように、白いスーツの少年がストラトキャスターを華麗にかき鳴らす。それは見事なまでに艶やかな即興スコアを演じ、暴れ狂うピアノを包み込む連携リレーのようなデュエットに変更してしまった。彼はそんな神業的な演奏を流しながらも、キーボードに向き合ってマイク越しに文句を零す。
「ヒカル! またお前は勝手に暴走しやがってぇ!」
「ははっ、カツユキ、歌!」
「言われなくても……っ」
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