第1話 キス魔はどっち!?

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第1話 キス魔はどっち!?

ここは新宿にあるライブハウス。 インディーズからメジャーまで、ジャズにロックにメタル。ありとあらゆるジャンルのバンドを擁するこの店は、客層も様々。けれど彼らが出演する日の観客は、何となく若者が多く、この界隈ではあまり見かけない、缶バッジでデコレーションした鞄を持つ女子が急増する。 「きゃあああ!」 「カツユキー!」 黄色い声援が店内で響き渡ると、水を飲んでいたボーカル兼ギタリストの少年が、爽やかな笑顔を見せて軽く手を振った。 「ヒカルー!」 「今日も仲良ししてぇー!」 妙なファンサコールが響き渡る中、ラストの曲演奏が金髪キーボード少年の指からダダダンッと始まり、歓声が音楽に紛れていく。 この一体感がたまらない。 観客の掛け合いが、弦をはじき鍵盤を叩くたび一緒にハモる。 そしてマイクを通して流れるハイトーンの甘い歌声は、力強いサウンドにも負けず、低い天井を突き抜け一体感溢れる会場の空気に煌めきを落とす。 二人が紡ぐ音楽には、自由に空を駆け巡る翼が生えていた。 (たのしー、超楽しい!) その歌声が誰よりも好きなキーボード少年・ヒカルは、演奏が終わると歓喜余ってカツユキに抱きつくクセがあった。 チュッ、と小さなリップ音がマイク越しにファンの耳元へ流れていく。 「「「キャー!」」」 「「「キャー!!!」」」 「「「WINGSサイコー!!」」」 これが異様なファン層の全ての原因だと、誰もがみんな知っている。
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