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両翼少年協奏曲 前奏(あらすじ)
俺は相羽勝行。
自己流で音楽を創ったりアレンジしたりするのが好きな、――まあ、音楽オタクの高校三年生だ。
中学生の時に知り合った金髪頭の友人、今西光と一緒に音楽バンド活動をしている。
普段の主な活動拠点は三つ。
新宿の小さなライブハウス。
横浜にある、芸能活動を許可されている私立高校。
二人で一緒に共同生活している有楽町の高層マンション。
特にライブハウスは俺たちの放課後の、なくてはならない生活空間だ。
そこで偶然知り合った敏腕プロデューサーにスカウトされて、俺たちは高校生Jロックバンド「WINGS」として、高ニの夏にメジャーデビューした。
とはいえここまで楽してきたわけじゃない。東京の生活に慣れなかったり、全く客が来ない日もあったし、光が誘拐されて俺たち二人ともが九死に一生を得た事件もあった。
そうやって色んな事件や苦難に巻き込まれながらも、なんとか二人で日々を乗り越えてきた俺たちは、二枚もCDシングルを出せたし、ライブをやれば必ずファンが来てくれるようになった。
まだまだ駆け出しの新人だけどね。けっこう売れてる方だと、自負してる。
光はいつだってわがままで自由奔放で、誰に対しても横柄な態度しかとらない。けれど、それが悪い王様みたいでエロカッコイイって評判になるほど、ド派手なブリーチ頭の美少年。
かくいう俺はどちらかというと愛想だけはいいし、童顔のせいか、みんなからはアイドル王子様なんて呼ばれている。
――正直、顔で評価されても嬉しくない。
でも俺は本当は、自分でも呆れるぐらい性格が捻くれていて――もとより家柄のせいで、『御曹司の優等生』イメージを押し付けられて生きている俺は、外ではいつも『イイコ』の仮面を被る。
ずっと建前で感情を塗り潰して、他人に嫌われないよう生きていくことに必死だった俺は、光みたいに自由になんでも言える強い男になりたくて……憧れている。
けれど光も、本当に言いたいことはうまく言えない。口下手で、他人との距離がうまくとれない代わりに、己の感情をピアノのメロディに乗せて語っていた。そう、彼はすべての想いを、感じたものを、全部音楽にしてしまうとんでもない天才ピアニストなんだ。
俺はその主旋律に伴奏をつけて、歌をのせる。
言いたいけれど声にならない俺たちの感情を、思いつくまま織り込んでいく。
音楽は、どんな感情を乗せて叫んでも、歌っても、誰も何も咎めない。嘘をつく必要もない。
悲しみや過去のしがらみ。
未来への期待と不安。
何もかも全部歌に詰め込んで、俺たちは今日もステージの上で歌うんだ。
――いつも、ふたりいっしょに。
それが俺たち、「WINGS」
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