両翼少年協奏曲 前奏(あらすじ)

1/2
458人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ

両翼少年協奏曲 前奏(あらすじ)

俺は相羽勝行(あいわかつゆき)。 自己流で音楽を創ったりアレンジしたりするのが好きな、――まあ、音楽オタクの高校三年生だ。 中学生の時に知り合った金髪頭の友人、今西光(いまにしひかる)と一緒に音楽バンド活動をしている。 普段の主な活動拠点は三つ。 新宿の小さなライブハウス。 横浜にある、芸能活動を許可されている私立高校。 二人で一緒に共同生活している有楽町の高層マンション。 特にライブハウスは俺たちの放課後の、なくてはならない生活空間だ。 そこで偶然知り合った敏腕プロデューサーにスカウトされて、俺たちは高校生Jロックバンド「WINGS(ウイングス)」として、高ニの夏にメジャーデビューした。 とはいえここまで楽してきたわけじゃない。東京の生活に慣れなかったり、全く客が来ない日もあったし、光が誘拐されて俺たち二人ともが九死に一生を得た事件もあった。 そうやって色んな事件や苦難に巻き込まれながらも、なんとか二人で日々を乗り越えてきた俺たちは、二枚もCDシングルを出せたし、ライブをやれば必ずファンが来てくれるようになった。 まだまだ駆け出しの新人だけどね。けっこう売れてる方だと、自負してる。 光はいつだってわがままで自由奔放で、誰に対しても横柄な態度しかとらない。けれど、それが悪い王様みたいでエロカッコイイって評判になるほど、ド派手なブリーチ頭の美少年。 かくいう俺はどちらかというと愛想だけはいいし、童顔のせいか、みんなからはアイドル王子様なんて呼ばれている。 ――正直、顔で評価されても嬉しくない。 でも俺は本当は、自分でも呆れるぐらい性格が捻くれていて――もとより家柄のせいで、『御曹司の優等生』イメージを押し付けられて生きている俺は、外ではいつも『イイコ』の仮面を被る。 ずっと建前で感情を塗り潰して、他人に嫌われないよう生きていくことに必死だった俺は、光みたいに自由になんでも言える強い男になりたくて……憧れている。 けれど光も、本当に言いたいことはうまく言えない。口下手で、他人との距離がうまくとれない代わりに、己の感情をピアノのメロディに乗せて語っていた。そう、彼はすべての想いを、感じたものを、全部音楽にしてしまうとんでもない天才ピアニストなんだ。 俺はその主旋律に伴奏をつけて、歌をのせる。 言いたいけれど声にならない俺たちの感情を、思いつくまま織り込んでいく。 音楽は、どんな感情を乗せて叫んでも、歌っても、誰も何も咎めない。嘘をつく必要もない。 悲しみや過去のしがらみ。 未来への期待と不安。 何もかも全部歌に詰め込んで、俺たちは今日もステージの上で歌うんだ。 ――いつも、ふたりいっしょに。 それが俺たち、「WINGS」
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!