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夜も更け、閉店の時間になり終電車も近くなった。
真っ赤な顔をして三人が店から出てくる。
「いつもすいません、課長。ご馳走様でした」
「おう!二人とも気を付けてな!明日も頼むぞ!」
課長はかなり酔っぱらっているようだ。
この典型的な時代錯誤の男、名を岩澤アキラという。
御年40歳、中堅企業課長、家族は妻が1名、子供が先月に5歳になったばかりの娘が1名の三人暮らし。郊外の新興住宅街に25年ローンを組んでマイホームに住む、これまた絵に描いたような典型的なサラリーマンだ。
「大丈夫ですか課長?帰れます?」
「ばかやろう!これしきの酒、全然問題ないわ!」
「はいはい、お疲れ様でした。また明日!」
そう言うと部下の二人は課長と別れ、JRの駅へと向かった。
「しかし今時あんなアナクロイズムの人、まだいたんだな」
「ああ、生きた化石モンだな。ハハハ」
二人は笑いながら改札口へと消えていった。
アキラは二人とは路線が違い、5分ほど離れた私鉄の駅へと向かった。
「しっかし、ちょっと飲み過ぎたかな・・・終電間に合うかな?」
アキラは小走りに走り出す。
すると胃の中が急激に蹴られたような衝撃と食道に異物感が走る。
「うっ!!」
・・・・・・・・☆☆☆☆★
「しまったあ!駅員さんごめんなさい!」
今ので3分ほどロスをしてしまった。
「やっばいなあ。終電間に合うかなあ・・・」
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