誕生日

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父は私が小さい頃から理解できるほどにだらしのない金銭感覚と性格の持ち主だった。 生活費と光熱費と学費はほとんど母一人でまかなっており、父は電気代と家のローンしか支払っていなかった。 その為、母はずっと働き詰めである。 英語の塾の先生、内職、美容師、スタジオなどの仕事をやりくりしたり、時にはお金を借りたりして雀の涙ほどの収入を得ていた。 私達、兄弟はお小遣いなんて貰わなかった。お小遣いとお年玉の存在を知ったのは小学生2年ぐらいだったと思う。 小学、中学生の時、私はお正月が大嫌いだった。クラスのみんながお年玉の自慢大会をするから。「おれ今年は3万円もらったんだ」「えーいいなぁ、私は1万円だけだったよ」 もちろん、私もこの自慢大会に強制的に参加させられた。本当は2千円とか千円しか貰っていないが、私は仲間外れにされるのを恐れて嘘をついた。当時はお金が当たり前のように貰えるみんなが本当に羨ましかった。
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