俺の可愛い生徒

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 昨夜は三つ編みをして眠ったらしい夏鈴の長い黒髪が、クネクネと波打って俺を誘ってくる。 +++  放課後になると紺色のハイソックスを履いた彼女が、スタスタという独特の足音を立てて廊下を歩いてきた。薄暗い美術室のカーテンを開け、微かに香る独特の画材の匂いの中で自分専用のエプロンを付けると、慣れた手付きでイーゼルとカルトンを所定の位置に設置し、目玉クリップで粗目の画用紙をセットする。太陽光をぼかすためにわざと白いカーテンを半分閉め、石膏像を置いた机をいつもの場所に置くと、毎日同じ時間帯の角度から照らされる陰影が整う。  背筋を伸ばした姿勢が美しい夏鈴が、椅子に浅く腰をかけて腕を伸ばし、鉛筆を構えて斜線を引いてく姿に、俺はただ見惚れているばかりだった。美しい横顔は大人びた色気がある。 細いうなじに俺がつけたキスマークを隠すための湿布が貼られていた。  つい半月ほど前、俺はとうとうこの可憐な女子高生を自分の女に変えたばかりだった。真面目な彼女は想像していたよりもずっと女の顔を持っていたから、俺が変えたというよりも自然と花開く様子を見ているような気分にさせてくれる…。  初めての出会いから十年後。待ちこがれた彼女の成長を喜び合いながら、めでたく結ばれた俺達の初夜は強烈だった。
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