俺の可愛い生徒

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 そろそろ、なにを? あ、まさか。シックスセンスか? 「あの…夏鈴のあの能力のことですよね…?」  爺さんは鋭い目付きで俺の目を射抜くように、じっと睨みつけてくる。 「そうだ。あれは世間には一応秘密にしてあってな。波戸崎家には代々強い霊能力者が生まれる家系なんだよ。私の妻も、…素晴らしい能力者で、人格者だった。 まだ未知だが、夏鈴には強いセンスを感じる。大人になると益々その才能に磨きがかかっていくこともあるかもしれない。そうなったら、なった時だと…諦めてくれると良いんだが」 「そんな心配はいりませんよ。俺にとって夏鈴がどんな道を歩くとしても、いつも傍に居て応援してやるつもりです。何が起きても彼女を一人にはしません」  さらさらとそんな言葉が口から出てきた。  夏鈴の爺さんは嬉しそうに目を細めて俺を見上げてきた。 「ほほう…。良い返答が聞けて安心した。これからも、あの子を宜しく。 多少、喧嘩もしておけよ。人生は短いようで長いんだ。思い通りにならなくても、思いを伝えることはそれ以上に大切にしなさい。 年寄りの戯言だと思って、まぁ適当に心にとめておいてくれたら良いわ」  爺さんはそう言うと、家に戻って行った。  もしも、何か困ったら頼れる人がいるっていうのもありがたい。  車を出して、今しがた聞いた不思議な話を反復した。代々伝わる霊能力…って、なんかすっげぇな。いや、でも夏鈴の妙な落ち着きや達観したような目線の高さは常人ではないことはとっくにわかってる。だからこそ、俺は自分が彼女に相応しいのか悩んでしまうんだ。
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