俺の可愛い生徒

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 美術教師となった俺にとってこの美術室という名の空間は、学校の中で唯一の支配領域。鍵をかければ安全だ。さらに奥の個室:美術準備室は普段他の教師や生徒は来ない。そこに、黒ベンチを先日運び込んでもらった。  他の準備室には机があったり、先生専用の椅子があったりするから、俺もダメ元で申請してみたら簡単に許可がおりて手に入ったんだ。保健室に置いてある椅子と何ら変わらないから、不自然さはない。  美術部の活動がある曜日は週三日。その時は生徒達専用の椅子となり、荷物だとかお菓子だとかが置かれるだけの場所でもある。  で、今日は部活がない日なのに夏鈴は個人的な理由で石膏像デッサンをしに来たわけだ。卒業までに三枚のデッサンを描いて、美術室のサンプル用に提供してもらう約束をしたから。  その二枚目を描き始めたところで、俺はもう耐え切れずに夏鈴の背後に立った。
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