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「……先生。今日は、絵を描かせて下さい」
小顔で切れ長の黒い瞳が揺れていた。白い顔は、頬だけが薄桃色に染まっている。夏鈴が恥じらうような顔をするだけでもヤバいのに、そんな、意味深なことを言うもんだから、益々キスしたくなるじゃないか。
学校ではとにかく先生らしくしようと頑張っているのに、愛する恋人を前にすると外向きの仮面は剥がれ、ふたりっきりというシチュエーションにやられて、俺は自制不能に陥りやすい。そもそもふたりっきりになりたくてお願いしたデッサン依頼を、夏鈴は素直に引き受けてくれちゃったもんだから、条件はもう整ってるも同然なんだよ。
あとは、夏鈴次第だ。
タブーを破って、今すぐ制服姿のまま…、なんてことを想像しているのは俺だけじゃない。
そうだろ?
「あの黒いベンチ…。俺が何のために買ったのか、知ってる?」
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