1章ー告げ彼らー

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また腕を取り歩きだすと、さっきよりも軽くなっていた。保健室のドアをノックし一声かけながら入室する。 「すみません、この人休ませてあげてください!あと、俺も休んでいいですか…」 正直もう限界だった。 保健室の先生にはあまり話を大きくしないよう、担任にうまく説明してもらうようお願いした。俺とカレンさんはベッドで横になり、心を落ち着かせる。あの後どうなったの、俺のスマホがどうなったのか心配だ。すると、隣からか細く弱った声がする。 「ねぇ、起きてる?」 「はい、起きてますよ。どうかしました?」 「…何であんなことしたの」 「またそれですか?さっきも言いましたよ、友達だからです」 「友達ね…そこまで大切なもの?」 カレンさんは悪気なく疑問に思ったことをただ聞いているだけ。だが俺にとってそれはとても不快なものだ。 「大切ですよ。何よりも…。カレンさんは友達嫌いですか?」 「…えぇ、嫌い」 そこからカレンさんは昔のことを話してくれた。友達がたくさんいて、大人達からも印象はよく、何不自由なく育ったという。 「ある時、私と付き合いたいって言う男の子がいてね。その時は今が続けばいいって思ってたから断ったの。でもそれがいけなかった…」 その男の子はクラスでも人気で、ほとんどの女の子から好意を向けられる中心人物だったという。その子からの告白を受けることでさえ注目を浴びてしまうのに、あまつさえ断った。それからカレンさんは友達全員に無視され、学校に行くのが怖くなり、転校を余儀なくされたのだ。そこから別の小学校では大人しくしていたようだが、中学からはタカが外れ、手当たり次第に恋人を作りまくったという。 「誰でもいいから、私を見て欲しかった。ずっと見てくれる誰かが欲しかった。ほら、1度私を好きにされせば元カノとして残るでしょ。でもバカよね、昔のことずっと引きずるなんて…」 「いえ、俺も同じ…ようなもんですよ」 俺が最初に感じた親近感は、昔に決めた事を今も貫いている、いや。過去に囚われているという所だ。 俺は小学4年生の頃、好きな子に告白をして付き合うことになった。それから俺は全ての時間を彼女ために使おうと、今まで遊んでいた友達とも遊ばなくなった。それを彼女にも要求し、その結果、愛想尽かした彼女から別れを告げられ俺は全てを失った。同じ時期に親の離婚もあって、5年生に上がる頃転校することになった。
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