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2章ー夏に続く言葉ー
ある日の昼、俺は全力で階段を降りていた。
今日は家に姉がいたから、弁当なのは間違いないのだが、なぜか鞄に弁当がなかったのだ。わ・す・れ・た!
「あーもう間に合わないかな」
昼の購買戦争に置いて出遅れは命取り、パン1つでも残っていればラッキーだ。その奇跡を求め全力で走っていた。すると角から大量のパンが突然現れた。うわ、やべ。
「きゃっ」
パンは宙を舞い、辺り一面に飛び散ってしまった。
「あーあーあーごめんね、ケガしてない?大丈夫?」
パンを回収しながら、驚いて腰を抜かしている女の子に声をかける。数だけで10個以上はあるが、これはみんなで食べるようだろうか。少し嫌な考えをしてしまったが挙動も至って普通、いや、かなり落ち着いている様子。
「ごめんなさい、ちゃんと前見てたら…」
「いやいや、走ってた俺が悪いから。ほんとごめんね!何かクレームがあれば2年7組の成谷友翔に言ってくれればいいから。じゃ!ほんとごめんね!」
気になることはあるけど、このままだと何も食わずに昼休みが終わってしまう。何も買えなかったらタクミから何かもらおう、そうしよう。
「あ、あの…」
「ん?」
ふと、彼女に呼びかけられ振り向く。
「その…ありがとう。成谷くん」
そう言うと彼女は歩き始め、階段を登っていった。俺はその時初めて彼女の顔を見て、少し懐かしいような気持ちになっていた。きっとどこかですれ違っていたのだろう。
そして、俺は購買へ向かい奇跡的に残ったパンと遅れてきた俺を見かねた田中からパンを1つ恵んでもらい、昼を乗り越えた。
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