1章ー春から始まるー

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2人が付き合って3ヶ月ということを知り、校門前の教師に軽く挨拶をして登校する。少し歩いて学校の中へ入り、俺は今から下駄箱を開けるのだが、この瞬間は俺にとって1番嫌な瞬間だ。 「はー…よし」 気持ちを落ち着かせ、ゆっくりと開ける。 「あー…また」 そこには上靴とその上に手紙が置かれていた。 「あーナルくんラブレターもらってるー」 「お、先輩か?モテるなーナルは」 手紙には「好きです。放課後、校舎裏で待ってます。」と書かれていた、いわゆるラブレター。俺はよくラブレターをもらう。というより、異性から告白されることが多い。特別誰かに優しくしたスポーツができて頭がいいわけではない。男でも女でも関係なく友達になりたい、その一心で話しかけて距離を詰めていくのだが、勘違いされることがよくある。少し顔がいいだけで好意を持たれるなんてこともある。 「あぁ、たぶんそうだろな」 俺が誰とも付き合わないのはもう同学年には知れ渡っていることで、一時期一部の女子からくすくす笑われることがあったがもうそれもなくなった。いやそんなことはいいんだ。1年生は入ってすぐで俺の存在を知らないだろうから3年生がこの手紙を書いたのだろう。 「ナル、行くのか?」 「行くよ」 「で?」 「断る。で、仲良くなるよいつも通り」 告白されて嫌なのはその後に友達になりにくいからだ。何度「これ以上優しくしないで」と言われただろう、俺は友達でいたいだけなのにあの時は辛かった。友達でい続けるって難しいんだよな。
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