1章ー嘘と友にー

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あとタクミにも。それに…。そういう思考をめぐらせているうちに教室へたどり着いていた。 時間はあっという間に過ぎていく。昼休みになり、食堂へ走り出す者やカバンから弁当を出す者に分かれ各々の昼食へ動き出していた。ちなみ今日の俺は後者だ。 「お、今日は弁当か。てことはユズさん帰ってきたんだな」 「あぁ、本当うっとうしいよ」 ユズ、成谷友澄(なりやゆず)。俺の姉だ。姉は基本、友達の家に泊まってそのまま大学へむかうので、たまにしか実家には帰ってこない。帰ってくる時は飲み会でお金を使いすぎて昼代がなくなった時で、そのとき母親が姉のために弁当を作るのだが、「ついでだから」と言って俺の分も作ってくれるのだ。いつもなら食堂に行って田中たちと過ごすのだが、弁当の時はこうしてタクミと話している。 「相変わらず嫌いなんだな、あんなキレイな姉そういねぇぞ」 「外面がいい分、家族には汚い部分を見せてくるんだよ。ストレス発散なのかほんとうざい、早く出てってくれないかな」 この会話のオチはいつもこれでタクミも聞き飽きているようだ。話しながら弁当を開け、久々の手作り弁当に手をつけていく。 「ナルのお母さんって料理上手いよな」 俺の母親は料理が好きでお金もまあまあ稼いでいるようなのでご飯で困ったことはない。 「普通だろ、仕事で料理してるから家で本気で料理する気ないって言ってるし」 「これで本気じゃないとか…」 と言いながらタクミは俺の卵焼きを食べる。取られた分は俺も取って互いに味の感想を言い合う。 「ナルん家って甘めだよなー」 「え、これ甘いの?そっちは甘いってわかるけど」 「お前、実は味音痴なんじゃ」 「いや違う!違うぞ!わかりやすいのはちゃんとわかる!」 そんな感じでどうでもいいような話を続けていると廊下の方から声がしてくる。 「あれぇどこだろぅ、あ!友翔いたー!」 俺を友翔と呼ぶのは一部の男子、女子なら三島さんだけだ。 「ん、三島さん?」 「もぅ名前で呼んでよぉ」 「じゃあカレンさん、どうしました?」 俺がカレンさんと話してる間にタクミは弁当を食べ終え、自分で買っておいた菓子パンに手をつけている。さすがは部活生、よく食べる。 「一緒にご飯食べたかっただけだよぉ、ほら食べよ食べよ」 2年の教室に3年がいるのは異質であり、さっきまでの賑やかさはなくなっていた。
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