1章ー嘘と友にー

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先輩に気をつかって少しずつ口数が減る中、「ナルだしな」「ナルくんだもんね」「成谷くんなら」という声も聞こえる。 「成谷いるし先輩がいてもおかしくない」とクラスの意見が一致したのか、また賑やかさが戻っていく。ほんといいクラスだな。 「友翔はいつもお弁当なの?」 「いつもは食堂ですよ、今日はたまたまです」 「そぅなんだ、じゃあ今度一緒に行こぅよ!」 「いいですけど、あそこすぐ席なくなりますし大丈夫ですか?」 「そこは友翔が取っといてよぉ」 「カレンさん…あの修羅場を知りませんね?そんな余裕ないですよ」 「確かに、あんな必死に椅子取りゲームしなきゃいけねぇなんて思ってなかったからな。俺はもう行きたくねぇ」 「そんなに大変なの?」 「そりゃもう…タクミの選択は正しいです」 食堂でご飯を食べるのは至難の業だ。ものの数分で席は埋まり、ご飯を受け取ったのに席が空いておらず、路頭に迷う者を何度見た事か。俺の場合、グループで座っている所に混ぜてもらうことで難を逃れている。試されるは度胸と速さ。グループとグループの間に生じる1つの席を瞬時に見つけるのが勝負どころ。座ればこちらのもの、ひたすら話しかけてご飯を流し込むだけだ。必死すぎていつも昼何食べたか覚えてないんだよな。たまに知らない人から声かけられるし俺頑張ってる。食堂でパンだけ買って教室で食べる勢もいるがそれもそれで荒れてて毎回ケンカしてるけど、パン1つで仲直りしてたし、いい人達なのが愛らしい。そんなことを話してる間にタクミはトイレへ俺は弁当を食べ終えていた。 「えぇでも、私も友翔とお昼食べたいなぁ」 「俺も余裕ないんで、昼に会うのは難しいです」 「むぅ…じゃあ代わりにこれ付き合ってよ」 そう言って渡してきたのは映画のチケットで、今週末に公開される人気の恋愛小説の実写でPVを見た時から俺も気になっていたものだ。 「あ、これ気になってたんですよね、いいんですか?」 「誘ってた友達が急にダメになっちゃって、行かないのはもったいないし、友翔が空いてたら一緒に行きたいなぁって…行ける?」 「行けます!日曜ちょうど暇だったんでお願いします」 「よかったぁ、また断られるかと心配だったんだぁ」 そのままカレンさんはその小説の良さについて語り始めた。主に推しキャラの紹介で「ここが好き!」「ここも好き」とどんどん、どんどん…。
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