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たとえ、どんな局面に陥ろうと、金融庁の監査相手にだろうと、絶対にこれはしないと思われる社長が、地べたに額を擦りつけて懇願する有様に、彼は猫耳を持つ手が震えた。
きちんとセットされた髪に、カチューシャが装着される。
それを見た社長の目が潤むのを、彼は確かに見た。
「……可愛い……」
社長の口から呟きが漏れる。
「可愛い……やっぱり可愛い、弓削くん……思った通りだ」
「……社長……」
彼は、自分を見つめてくる社長の興奮した目に、混乱と羞恥で眩暈がしそうになった。これは一体何の性癖に分類されるのか、彼の頭では理解不能だった。だが、彼自身、興奮する社長の、舐めるような目で見つめられて湧き上がるのは、はっきりとした欲情だった。
「可愛い……似合っているよ、弓削くん」
「あ……あまり、見ないでください……」
「ニャア、って」
「えっ?」
「ニャアって鳴いてみてくれ」
「そっ……それは」
「頼む。ね? 一言でいい。ニャアって、ね?」
いつの間にか足元にいた社長が、隣に座って顔を寄せている。彼は羞恥でどうにかなりそうになりながら、やっと声を出した。
「ン、ンニャア……」
「弓削くんっ! 可愛い!!」
ベッドに激しく押し倒され、鼻息の荒い社長の接吻で覆われた。
「ああっ! 可愛い! ニャアって! あの弓削くんが、可愛いネコになっている! はっ! 弓削くん……」
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