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なぜ、いつまでも社長のままなのか。この人の気持ちはどこにあるのか、苛立ちが募るばかりだった。
現実世界に戻っても、いつもの端然とした社長の声は聞こえなかった。
消え入りそうな掠れた声が、弱々しく丸まった背中に漂っていた。
この人から、こんな声を今まで引き出せなかったのは、自分にも原因があるのかもしれない。
素面では、そんな力を持てなかった。アイテムに頼らざるを得なかったのは、お互い様である。
「社長」
とてもではないが、今は、ニャンなんて呟くことすらできないが。
「ネコ以外に、他のアイテムはあるんですか?」
自分も、いつもよりは砕けた笑顔を見せているだろうか。そんなことを思いながら、彼は、大きなベッドの上で泳ぐように身をよじらせた。
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