空回りラブ

1/7
前へ
/51ページ
次へ

空回りラブ

「今度一緒に、温泉に旅行してくれませんか」 「嫌だよ」  意を決して告げたのに、コンマ一秒の早さで返され、戸隠(とがくし)はパソコンの上に手が乗った。ららららららららららららとエクセルのセルに文字が並ぶ。  なんだこれは。俺の恋のテーマソングですか。こんな情けないバックミュージックですか。 「男同士で温泉とか、どう考えたって仲居さんの注目の的だろう」 「同好の士で、ともに温泉街に泊まることだってあるでしょう。鉄っちゃんとか」 「じゃ、お前何もしないの?」 「します」 「鼻息荒くチェックインして、たとえバードウオッチング同好会ですという顔をしたってバレバレだよな」 「気にしないでくださいよ!」 「するよ。俺は気が弱いんだよ。あと、俺は民宿に毛が生えたような温泉宿になんて絶対泊まらねえから。部屋食個室露天風呂つき料亭温泉旅館じゃないと、人目気にして旅行なんてしねえから。必然的に一泊五万以上」 「検索します!」 「仕事しろ」     
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加