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空回りラブ
「今度一緒に、温泉に旅行してくれませんか」
「嫌だよ」
意を決して告げたのに、コンマ一秒の早さで返され、戸隠はパソコンの上に手が乗った。ららららららららららららとエクセルのセルに文字が並ぶ。
なんだこれは。俺の恋のテーマソングですか。こんな情けないバックミュージックですか。
「男同士で温泉とか、どう考えたって仲居さんの注目の的だろう」
「同好の士で、ともに温泉街に泊まることだってあるでしょう。鉄っちゃんとか」
「じゃ、お前何もしないの?」
「します」
「鼻息荒くチェックインして、たとえバードウオッチング同好会ですという顔をしたってバレバレだよな」
「気にしないでくださいよ!」
「するよ。俺は気が弱いんだよ。あと、俺は民宿に毛が生えたような温泉宿になんて絶対泊まらねえから。部屋食個室露天風呂つき料亭温泉旅館じゃないと、人目気にして旅行なんてしねえから。必然的に一泊五万以上」
「検索します!」
「仕事しろ」
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