シチュエーションラブ

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 彼が制服を身につけていくのを、男の目が追う。魅入られるように、言葉を失い、その姿を見つめる。 「どお?」  彼が呼びかけても、男は返事をしなかった。 「パブリック時代の俺を思い出したか」  彼がからかうように笑って、初めて男はもとの表情に戻った。 「そんな下品な着方をしていなかっただろう」 「これが日本の男子高校生らしさ! どお? 先生」 「勝手に始めるな。先生、なんて言われても俺は分かんねーよ。学校なんて行ったことないからな」 「子どもの頃はあっただろう」 「政府が管理する学校は知らん。教師だってちゃんとした教師じゃないしな」  じゃあ、と、彼は傍らのマンガを手にとった。 「そんな世間知らずのお前にこそ、適した教科書がある」 「『先生にいけないことされています』……そのマンガから教師というものを学べと?」 「シチュエーションだ! 俺はヤンキーが入っている生意気な生徒。お前は数学教師……そんなガチムチな数学教師いねえか。よし、百歩譲って体育教師だ。生徒指導という、特定の生徒を呼び出して教育的指導という名の下に堂々と淫行する。じゃ、始めるぞ!」 「始めねえよ。シチュエーションだろうがなんだろうが、そんなクズを演じるつもりはない」  男は本気で不快、というようにそっぽを向いた。     
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