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腕の温もりに、強さに、ただ感情が乱されて、聴覚がちゃんと働いていた自信がない。
ああ、ただ。
口づけは、こんな余裕なんてなかったことは覚えている。
今のように、気持ちを乗せられるようなキスではなかったな。
ただひたすら、欲情を擦り合わせて、高ぶる感情を、発散させようと必死だった。
「先生……」
唇から首へ、鎖骨へ、胸へ、男の唇が降りてゆく。
優しさは、余裕からだった。互いに、満たされているがゆえの、愛おしい、愛撫。
「先生、ねえ、いいんです。めちゃくちゃにして。俺を、裸にして、おもちゃにしていいから、ねえ先生、こんな、部屋にまで押しかけてきた悪い子なんだから、酷くして、ね、え、お願……い……」
彼が、感情と、快楽に、かき回されても。
男の愛撫は、いつもと変わらなかった。
ゆっくりと、全身を弛緩させ、足の指先、髪一本にまで快感を行き届かせてから、
極限まで耐えた、自分のそれを、中にのめり込ませてくる。
最初は、少しずつ。馴染ませるように。
次第に、激しく、的確に、絶頂に導く箇所を突いてくる。
男の愛し方そのものだった。
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