シチュエーションラブ

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○ ○ ○ 「お前、やっぱりマンガを読むべきだと思うんだよ。俺はこれで、どれほど日本語を学んだか分からんぞ。翻訳されているマンガは限られるからな」 「お前が持っている本を読むなら、国語辞書より『卑猥語辞典』が必要だろう」 「俺はお前と、リーマンシチュも試してみたいんだ……! あ、そうだ。そろそろ会社ぐらい作ろうかな」 「まあ、何でもいいから。ネカフェで寝るなよ。マンガに夢中になっていないで、ちゃんと帰ってこいよ」  勤勉な男は、激しい運動の直後だというのに働きに向かうべく靴を履いた。そして、おもむろに振り返った。 「……俺の中では、あの時のお前が一番燃える」  返事を待たずに男は扉を閉めたが、彼は苦笑するしかなかった。    それじゃシチュエーションラブにならねえんだよ。  彼は六畳一間のせんべい布団の上で、裸のままマンガを読み出した。 ○ ○ ○ 受け……イスハーク・サラーフ・ファハド・ハサム・・(以下略) 某国王子。第二十四位王位継承者。イギリス留学中政争を回避するために日本に亡命。個人資産数千億。二十二歳。日本のマンガを読み尽くしたら何か事業でもやろうかと考えているが、おそらく読み尽くすには一生かかるかと思われる。 攻め……グスタフ・ハヴェル 東欧出身のもと傭兵。イスハーク王子のSPとして働いていたが、まんまとほだされて一緒に亡命までしてしまった苦労人。三十一歳。家事全般を担当しつつ、土木作業員として従事する勤勉な男。得意料理は餃子。隠し味は秘密。  
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