木枯らし

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B「ーそれで、君はついに写真家になれたわけか。おめでとう。」  彼からの称賛に少し照れてしまう。雪が降っているが心だけでなく体まで暖かくなってゆく。 A「ありがとう。あなたとの約束があったからよ。私こそ礼を言いたいわ。」 B「そんな、僕に礼だなんて…。僕はたいした事も出来なかったのに。」 A「あなたは本当に昔から変わらないわね。……その、約束の内容…覚えてるよね?」 B「もちろんだよ。『僕がこの病気を治して、君が写真家になったら結婚しよう』。だよね?」 A「そうよ。だからね、その…」 B「ごめん」 A「…え?」  理解できなかった。いや、理解はできていたけど信じることができなかった。とても簡単で、とても痛いその言葉を。 B「君は頑張っていたのに、僕は約束を守れなかったよ……。」 A「それってどういう…、でもあなたは今もう元気じゃない」 B「…もう、ダメだったんだ。だから、最後に…」  彼はいつも通りの優しい顔をしていた。けれど私が恋をした蒼い瞳の奥にはとても深い悲しみの色があった。 A「最後…ねぇ、それって嘘よね。……お願い」 B「ゴメンね…。君を、…君を悲しませたくはなかったのに……本当に…ゴメンね………………サヨナラ」  彼がそう言った瞬間、突風が吹き、雪が舞い上がった。急におきた出来事に驚き目を閉じた。風の音が遠くへ行った時、私は目を開けるのが怖かった。目を開けたら彼はもういないかもしれない、そう思ってしまう。でももしかしたら………、恐る恐る目を開ける。 A「…………………どこにいったの?出てきてよ。 …もし冗談だったら怒るわよ?   ……ねぇ、いやだよ。…………一人ぼっちなんて…イヤだよ。 ーーお願い………。ねぇ……何か、答えてよ……。」  どれだけ願っても聞こえるのはただ過ぎ去っていく風の音と、酷く凍えてしまった私の声だけだった。
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