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《Chapter-01》 Window
「もうあんなに、小さいわ……」
私の肩で、残念そうに呟いたケイトの目は赤かった。
「……ああっ」
窓に張りついていた私は声を漏らすが、返す言葉は浮かばない。
私の大事な天使のか細い肩を抱き寄せて、眺め続けるだけだった。
四角い宇宙船の丸窓越しに、蒼白の惑星がゆっくりと遠ざかる。
色褪せた大地は、免疫不全の病魔に侵されたように斑な砂漠が目立つ。
かつてBLUE EARTHと呼ばれた麗姿は、もうそこには無い。永遠の別れを感じさせるその青白さは、悲愴感さえ漂う。
黙って眺めていると、寂しさよりも悲しさよりも、憤慨の念が込み上げてくる。
人類は、惑星地球を征服し、我がもののように支配してきた。
命のハーモニーが溢れる美しい大自然の調和を崩壊させた。
あげくの果てに、母なる星から逃げ出した。
おおー、なんと愚かなことか。
殺戮の歴史を積み重ねて来た身勝手な人類にとって、自らが招いた因果応報。身から出た錆。自業自得なのだろう。
そして、人間の飽くなき開拓欲は、とうとう宇宙へと羽ばたいてしまった。
『宇宙、それは最後のフロンティア』
20世紀の遠い昔、当時人気を博した宇宙船が活躍するSF映画の一節だが。今まさに人類は、最後の開拓の地に足を踏み入れたのである。
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