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「天体が専門の吾輩だからこそ、信じられないことなのだよ」
「もし、それが事実なら……、空間の瞬間移動『ワープ』ですか?」
「そうなのだよ。鋭いね、キャプテン!」
「宇宙船が、別の宇宙まで、空間移動したか? 我々の太陽系自体が、一瞬にして移動したか? なんだ」
「太陽系が移動? ……ええっ?」
私は、博士の突飛な説明に、自分の耳を疑った。
「それもある。我々の太陽系は、銀河系の外縁を、数億年程かけて、一周しているからね。……でも、それには速すぎるから、考えにくいが?」
「それなら、前者の可能性が?」
「しかし、ここは我々の太陽系内だ。小惑星帯付近かも? スターマップで確かめた」
「うんん。何とも不思議ね? 火星を飛び越えたのでしょうか? ……ソーラーストームのせいで、何かが、狂ってしまったのかしら?」
隣のケイトは、腕をこまねいて小首を傾げた。
「実は博士、有視界モニターに、謎の天体が現れたんですよ。……なっ、ケイト?」
「はい。スターマップには無い、未知の天体です」
ケイトは魅惑の瞳を、より大きく見開いて頷いた。
「それは……、あれかね?」
フォレスト博士は、クリアービューで広がる天球の一点を指差した。
私は、「はい」と答えたつもりだが、声にはならなかった。
暫らくの間、私たち三人は呆然と、大天球のパノラマに浸るのだった。
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