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《Chapter-04》 Warning
月軌道を離れて2日目、火星航路は順風満帆である。
乗組員の緊張感もとれたようで、船内は平穏なムードに包まれていた。
夕食が済んだMEETルームでは―――
「火星に住んだら、わしら、火星人になる? ……ってことやなぁ?」
ジョーが笑い話を始めた。太い眉を上げ下げしながら、東洋人特有のお笑いショー張りにジョークを飛ばし、みんなの爆笑をかっていた。
そんな仄々とした雰囲気も生まれたそのときだった。
【Warning! Warning! 危険度最高レベル。Warning! 】
突然、SMC3000の警報が鳴った。穏やかだった船内に轟音が駆け巡った。
警報ランプの色はレッド点滅だ。
「緊急事態です! キャップ」
通信オペレーターのリン・ソンが、ハイトーンな声を上げた。
「WASA本部に、確認連絡だ!」
私は直ちに指示を出した。
「ラジャー! キャプテン」
宇宙船のマザーコンピュータは、様々な危険を察知して警報を発する。
『SMC3000』とはSuper Mother Computer 3000の愛称で、最新鋭の量子コンピュータである。
今回の警報はかつてない大警報音だった。
小型の流星群やスペースデブリは、オリーブ色。
オーバーレンジな宇宙線の警報は、イエロー。
大型隕石では、オレンジ色と、警報ランプは色別に点灯する。点滅するときは緊急事態だ。
今回のレッド点滅は、最高レベルの危険度となる。
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