第一章 八月の夜

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何ヵ月ぶり、いや何年ぶりだろうか。 学生の時は、よくも夜な夜な行っていたのに、 突然行かなくなり、今に至る。 厳重な警備をくぐり抜け、中に入ると土曜日の夜という事もあり、人がごった返しいた。 足の踏み場も無いくらい、人、人、人の群れ、 そして、ナンパの嵐。 ゲート前で待ち伏せをするように男が配置していたり、薄暗い中に人と人が混じりあい、耳元で何かを囁きあい。女性は、笑顔で微笑んでいた。 一室は、入ってきたばかりの僕を呑み込んだ。 混沌としていて、渋谷の全てを詰め込んだかのように。 これは、治外法権だ。一種の不毛地帯と化していた。 何度も行っていた自分はブランクを感じていた。 ナンパは下手で、持ち帰る事も、経験した事がない。 持ち帰り童貞のようなものだ。 そんな落ち着かない中、自分達はついて早々、椅子に座った。
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